静岡県 焼津市 鮪の御宿「石上」 女将 石上智子さん

鮪(まぐろ)や鰹(かつお)が豊富に水揚げされる焼津港のほど近く、駿河湾を見晴らす海辺にたたずむのが、鮪の御宿「石上」。鮪をはじめ、旬の魚介類を一番美味しいタイミングや料理法でいただけるのは産地ならではの贅沢。6室だけというお宿ならではの温かなおもてなしにも癒されます。「今度のお休みは美味しい鮪を食べに行こうか」、そんな気軽さで “和のオーベルジュ”へ出かけませんか。

鮪、あわび、駿河湾だけの桜海老。心までとろけそう
鮪、あわび、駿河湾だけの桜海老。心までとろけそう

黒鮪(くろまぐろ)と並ぶ高級魚といえば、南鮪(みなみまぐろ)。日本屈指の海洋漁業基地である焼津港は、南鮪の有数の水揚げ量を誇ります。同旅館の夕食には、とろけるような鮪づくしや、金目鯛、太刀魚、しらす、宿の前で獲れるあわび、さざえなど、駿河湾の幸がずらりと並び、圧巻のひとこと。駿河湾だけで獲れる桜海老も10~12月に秋漁の季節を迎え、旬の恵みに身も心も満たされます。

もうひとつのごちそうは、女将直筆の書
もうひとつのごちそうは、女将直筆の書

自慢のお食事は、杉板と煤竹でしつらえた和モダンなお食事処でゆったりと。テーブルの上を彩る敷き紙には、禅語をヒントに女将が直感で紡ぎ出した言葉が記してあり、食後に女将がごあいさつがてら、それぞれの言葉に込めた意味を伝えてくれます。美食と言葉という粋なおもてなしに癒やされ、明日からの活力が湧いてきます。

窓を開けて、青い大海原をひとり占め
窓を開けて、青い大海原をひとり占め

6室の客室は、すべて駿河湾を見渡せる絶好のロケーション。障子窓を開けると、そこは青い大海原。夕暮れの水平線にきらめく桜海老漁船の漁り火、満月から海面にすーっと伸びるムーンロード、神々しい朝日…刻々と変わりゆく情景は見飽きることがありません。しらす船のポンポンという船音で目覚める朝も格別。

ひのきの廊下が、湯上がりの素足に心地いい
ひのきの廊下が、湯上がりの素足に心地いい

浴室は男女別の内風呂がそれぞれに。手足をしっかり伸ばせてゆったりつかれます。そして、同館の特色といえば、スリッパがないこと。22年間、毎日丁寧に乾拭きをしているひのきの廊下は素足に心地よく、その美しい艶に手間ひまをかけた愛情を感じられるはず。女将が生けた野の花が、館内の随所にさりげなく。「派手な設備がないからこそ、自分をリセットできる」と働き盛りの男性のひとり旅も増えているそう。

おもてなし上手は、聞き上手。「ただいま」と帰りたくなる包容力
おもてなし上手は、聞き上手。「ただいま」と帰りたくなる包容力

病床に伏した父の代わりに、祖父が開業した旅館を継ぐことを決意。「テレビ局や雑誌から『鮪づくしを取材したい』というニーズが多かったので素直に受け止めただけなんです」。と、22年前、建て替えのタイミングで「鮪の御宿」というわかりやすい冠をつけたその先見性はさすが。
女将として順風満帆な船出かと思いきや、「はじめは勝手に女将像を思い描いて気負ってしまい、体を壊すほど思い悩みました。でも、話を聞いてほしいお客様が多い、と気づいてからは『聞くが8割、話すが2割』を意識でき、自然体で務めることができるようになり、今では天職だと思っています」。
そんな女将が一番大切にしているのは言葉の力。夕食の敷紙に女将がしたためる言葉も、料理と同じく評判だとか。「お客様をお出迎えした後、直感で書を書いて食事処のテーブルに置きます。お座りになる席は自由なのですが、不思議と引き寄せるのか、『今の私にぴったりの言葉』と感激してくださることが多いです」。
旅館の空気感をつくり出すのは、やっぱり女将の人柄。包容力と好奇心に満ちた素敵な女将でした。


大崩海岸 鮪の御宿 石上
住所/静岡県焼津市小浜 1047番地
TEL/054-627-1636

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