静岡県 伊豆天城湯ヶ島温泉「白壁」 女将 鈴木裕香さん

静岡県 伊豆天城湯ヶ島温泉「白壁」 女将 鈴木裕香さん

伊豆半島のちょうど中心、静かな山間にたたずむ天城湯ヶ島温泉。天城山と狩野川の大自然が間近に迫るこの地で、かつては川端康成をはじめ数々の文豪が温泉宿に逗留し執筆にいそしんだとか。昭和29年に開業したここ「白壁荘」もその温泉宿のひとつ。先々代が友人のために建てた5室の執筆小屋から始まった同館には、「しろばんば」の井上靖氏や「夕鶴」の劇作家・木下順二氏が毎年のように逗留。名曲「天城越え」もここでつくられるなど、数々の作家たちにインスピレーションをもたらしています。「白壁 和とモダンが織りなす里山の古民家」として2019年春にリニューアルした同館で、知的好奇心をくすぐる旅はいかがですか。

重厚な梁が見守る落ち着いた設え。忍者屋敷のようなわくわくも

重厚な梁が見守る落ち着いた設え。忍者屋敷のようなわくわくも

のれんを分け入ると、古民家のような懐かしい空気に包まれてほっと一息。大梁が見事なロビーには、久能山東照宮で使われた門扉や、「白壁」にゆかりのある作家直筆の額といった貴重な品々がさりげなく飾られ、文化の薫りが漂います。鯉が泳ぐ庭を囲む本館、渓流沿いの別館と増築を重ねたつくりになり、客室へのアプローチが忍者屋敷のようにわくわく。この複雑な間取りがプライベート感を高めてくれ、近年はおひとりさま旅も増えているそうです。(写真は特別フロアのラウンジ)

地学好きにたまらない。約53トンの「巨石露天風呂」

地学好きにたまらない。約53トンの「巨石露天風呂」

名物といえば、約53トンの溶岩をくり抜いた「巨石露天風呂」。約30年前の改築工事で偶然見つかり、あまりの巨大さからピラミッド建設と同じ方法で石を動かして浴槽に仕立てたそうです。また内風呂「大岩の湯」にある自然の岩壁は“2000万年前の海底火山によって伊豆半島ができた”という証になるもので、TVで紹介されて以来、全国から地学好きが訪れるようになりました。さらに「巨木風呂」にも注目。樹齢1200年のアフリカ紫檀をくり抜いた浴槽は、巨石風呂を気に入った常連客が制作してくれたというから驚きます。肌あたりの柔らかな源泉がとうとうと流れる多彩なお風呂で、大地のパワーをいただいてみては。

天城湯ヶ島の生わさびを贅沢にすり下ろして

天城湯ヶ島の生わさびを贅沢にすり下ろして

天城湯ヶ島はわさびの名産地。深い山から湧き出す泉で栽培されるわさびは、旨みと甘みを併せもち、国内外で最高級と評価されています。白壁自慢の会席料理では、1本数千円とも言われる生わさびを自分ですり下ろして贅沢に味わえるのが魅力。わさびをたっぷり載せた「わさび鍋」や、わさびの薬味でいただく和牛やあわび、炊き立ての白米に少しのせて香りを楽しむ「わさびご飯」も絶品。沼津で仕入れる新鮮な魚介、冬の美味・猪など、伊豆山海の幸づくしで至福のひとときを。

露天風呂や囲炉裏付きなどお気に入りの客室で滞在を

露天風呂や囲炉裏付きなどお気に入りの客室で滞在を

狩野川渓流を望む別館と静かなお庭を囲む本館があり、各室の設えはさまざま。毎回違うお部屋を楽しむ常連の方も多いそうです。なかでも井上靖氏が帰省の度に宿泊した「あまんじゃく」は、茅葺天井と囲炉裏といった懐かしい風情が印象的。日本のみならず、世界からも同氏のファンが訪れます。2019年4月のリニューアルでは、開業当時の趣を生かした和モダンな特別フロアが誕生。露天風呂と和ベッド付きで専用ラウンジもあるなど、ホテルライクな寛ぎ方ができそうです。

「こうしなければ」と気負わず、素直に穏やかに。

「こうしなければ」と気負わず、素直に穏やかに。

開業時より従業員と大家族のように切り盛りしてきた白壁で、女将の鈴木裕香さんは生まれ育ちました。「弟がいるので私は宿を継ぐ気はなく、自由に生きようと思っていました。大学時代は東京で過ごし、船員になろうと思っていたんです」。海上特殊無線技士の資格もとったものの、卒業後いったん立ち止まることに。「適性を考えたいと思い、実家に戻りました。そこで宿を手伝っていたら旅館でお客様をお迎えすることに魅力を感じて居ついてしまったというか(笑)。結婚・出産・祖母の介護もきっかけになりました」。
これまではバックヤードが中心でしたが、2019年春のリニューアルを機にお母さまから女将を受継ぐことになりました。 「弟に『一緒にやってくれないか』と頼まれ、多くの支援者の方々や応援して下さるお客様に恵まれたことで、覚悟が決まりました。女将になって良かったのは、お献立やサービスの改善をスタッフと協力しながらすぐに実行できることですね」。約半年で変化があらわれつつあり、「2泊以上の御滞在くださるお客様が少しずつ増え、天城山麓の静かな昼下がりをゆっくりと楽しんで頂けるのがうれしいですね。温泉宿の一番おススメの時間帯なんですよ」。
プライベートでは小学生3人の母として奔走中。「子育てや健康の知恵を教えて頂くことが多く、お客様に助けて頂いております」。一歩下がって教えを受け止める姿勢はきっと旅館を裏から支えるバックヤードで身に付いたもの。ほんわかした人柄と程よい距離感が心地よい女将でした。



伊豆天城湯ヶ島温泉「白壁 和とモダンが織りなす里山の古民家」
住所/静岡県伊豆市湯ケ島1594
TEL/0558-85-0100 

Posted by

Drive! NIPPON編集部

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