
今年の夏は、ものすごく暑かったですね。しかし10月を過ぎると、すっかり気温も低くなり、とても過ごしやすくなってきました。そして瞬く間に、ウインターシーズンがやってくることでしょう。そんなドライブにはもってこいの季節を前に、今回は「雪道にも強いアウトドアカーを愛車にするならどれ?」というテーマでクルマ選びをしてみましょう。
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目次
ジムニーはやっぱり外せない、世界に誇るニッポンのオフローダー

cap:軽自動車規格の“素”のジムニー
クラシカルで愛らしいジープルックと、そのスタイルに裏打ちされた高い走破性によって、瞬く間に人気モデルとなったジムニー。特に5ドアモデルとなった「ノマド」は居住性が向上し、いまや納車4年待ち!? とも言われています。
だからいまさらその良さをアピールする必要なんてないのですが、やっぱりオフローダーの代表選手として、ジムニーは外せません。そんなジムニーで誰もが迷うのは、軽自動車の“素ジムニー”にするか、モリッと張り出したフェンダーがかっこいい「シエラ」にするか。そしてジムニー初の5ドア「ノマド」を選ぶかでしょう。
流行りで言えば、断然ノマドですよね。シエラと同じワイドフェンダーを装着したカッコ良さ。34センチ長くなったホイルベースのおかげでリアシートもより快適になっているし、何よりリアゲートを開けなくても、フロントシートを倒さなくても、サクッと荷物をリアシートに放り込めます。

cap:1.5Lのジムニー・シエラ
乗り味としては、軽快感が欲しいなら“素ジムニー”。パワーは64馬力と軽自動車の自主規制値を守っていますが、1100kgを切る軽さと(ロードスターのATモデルと同じくらい!)4WDの駆動力で、ちょっと背の高いボディを身軽に走らせます。5MTを選べば、さらにクルマとの一体感が高まります。
対してシエラは、おっとりしてます。1.5直列4気筒エンジンは101馬力あるけれど、ターボではないからその吹け上がりも優しい感じ。そして5ドアのノマドになると、そこに“どっしり感”が少し増してきます。

cap:日本のサスペンション専用メーカーであるテインが、中国で開催した国際試乗会の様子。「4×4 ダンパー G2」」を装着したジムニー「ノマド」の走りは軽快そのもの!
先日私はサスペンションメーカーである「テイン」の試乗会で、オフロードコースを走ってきました。ランドクルーザーやジープ・ラングラー、フォード・ブロンコといったそうそうたるメンツのなかで、一番走りが楽しかったのは、なんとジムニー・ノマドでした。
ジムニーファミリーの中でノマドは、一番重たいクルマです。しかしアクセルをグッと踏み込めば、普段はおっとりした走りからは想像もできないくらい、荒れ地を軽やかに、ガンガン走ります。この身軽さと、走破性の高さがあるから、雪道でも安心感が高いのです。やっぱりジムニーは、世界に誇るニッポンのオフローダーです。
SUZUKI JIMNY NOMAD
車両本体価格:¥2,651,000~(5MT)/¥2,750,000~(4AT)(税込)
全長×全幅×全高(mm):3,890×1,645×1,725
エンジン:水冷4サイクル直列4気筒
総排気量:1,460cc
タイヤサイズ:195/80R15 96S
燃料消費率(WLTCモード):14.9km/L(5MT)/13.6km/L(4AT)
駆動形式:4WD
乗車定員:4名
https://www.suzuki.co.jp/car/jimny/
モーター駆動の素直な加速が雪道でも運転しやすい ニッサン ノートe-POWER

雪道にも強い、アウトドアカーで、なんで日産ノートなの!?
きっと多くの方が、そう思うでしょう。その理由は、ノートが「eーPOWER 4WD」をラインナップしているからです。日産のeーPOWERは、100%モーター駆動の“シリーズ・ハイブリッド”。エンジンは発電機として機能して、ここで作り出した電気で走ります。
モーター駆動だと、アクセルを踏んでもすーっと素直に加速してくれるから(それをリニアといいます)、雪道でも運転がしやすくなります。さらに4WDを選べば、その安定性を高めながら、快適に曲がることができます。特に日産の電動4WD制御は、とても気持ち良くクルマを曲げてくれます。そしてこの緻密な制御が、雪道や氷のある路面にも生きてくるのです。

同じeーPOWERを搭載する日産のクルマとしてはエクストレイルの「e-4ORCE」(イー・フォース)もあります。こちらはサイズも一回り以上大きいし、カッコも都会的なアーバンSUVです。「VCターボ」と呼ばれるエンジンも、圧縮比を可変させて効率良くパワーを引き出す独自の技術を搭載しています。
そういう意味でいうとエクストレイルはお題にばっちりなのですが、お値段もちょっと高め。まずはeーPOWERと4WDの組み合わせが素直に味わえるノートで、その良さを体験してみて欲しいと思いました。その「ほぼEV」な乗りやすさは、雪道でも真価を発揮してくれるはず。充電の必要もないから、ロングドライブも不安なくこなせるでしょう。
NISSAN NOTE e-POWER X FOUR
車両本体価格:¥2,614,700~(税込)
全長×全幅×全高(mm):4,045×1,695×1,520
エンジン:DOHC水冷直列3気筒
総排気量:1,198cc
タイヤサイズ:185/60R16 86H
燃料消費率(WLTCモード):23.8km/L
駆動形式:4WD
乗車定員:5名
https://www3.nissan.co.jp/vehicles/new/note.html
8人乗れる大柄なボディでも、オフロードをどっしりしなやかに走るミツビシ デリカD:5

デリカD:5の魅力は、ずばり“頼もしさ”です。
その要となるのはまずエンジンで、2.2リッターの直列4気筒ディーゼルターボが搭載されています。最高出力は145PSと控えめですが、最大トルクは380Nmとモリモリ。アクセルの踏み始めこそ穏やかに力を出して行きますが、だからこそ雪道だと扱いやすいのです。ちなみに三菱としては初となる、尿素SRCシステムも採用して、クリーンディーゼルとしての性能にも磨きをかけています。
力強いエンジンと合わせて、車体もどっしりしています。4.8mの大柄なサイズ、最大で8人乗りが可能なボディは、ピラーやテールゲートといった筒状になる部分を「リボーンフレーム」で環状に強化しています。そこにしなやかな足周りを組み込んでいるから、ゴツゴツとした路面でも突き上げを柔らかく吸収。ここに4WDの駆動力が加わって、雪道をグイグイ走ってくれます。
着座姿勢は背筋をしっかり伸ばすアップライトスタイルですが、それが長距離移動でも疲れを和らげてくれます。見晴らしのよいコクピットは視界が良好で、その頼もしい乗り味が体になじんでくると、ウインターロードの運転が楽しくなってしまうほどです。

個人的に好感度が高いのは、2列目シートの乗り心地。座面は少し小さめですが、余計な機能がない分だけシートそのものの重量が軽くなるのでしょう、荒れた路面でも横揺れしません。クリアランスもきちんと取られているから、居心地は快適。数あるミニバンの中でも、すごくまじめに作られている2列目シートです。また3列目シートも、特別豪華なところはないけれど、大人がきちんと座れます。

インフォテイメントもシンプルで、電動化も一切なされていないけれど、だからこそ質実剛健さが際立つ「デリカD:5」。500万円を切るスタートプライスも、とっても魅力的です。
MITSUBISHI DELICA D:5
車両本体価格:¥4,560,600~(税込)
全長×全幅×全高(mm):4,800×1,795×1,875
エンジン:DOHC16バルブ4気筒
総排気量:2,267cc
タイヤサイズ:225/55R18
燃料消費率(WLTCモード):12.6km/L
駆動形式:4WD
乗車定員:7・8名
https://www.mitsubishi-motors.co.jp/lineup/delica_d5/index.html
RAV4最後のガソリンモデルで、ダイナミック かつ滑らかなオフロードの走りを楽しもう

新型が登場目前のRAV4ですが、だからこそ現行モデルも注目です。なぜなら新型RAV4は、プリウスやクラウンが採用するフロントフェイス、「ハンマーヘッド」デザインを基調としたスタイルになります。3種類発表されたなかで「アドベンチャー」などは、アウトドアテイストをうまく盛り込んでいるけれど、個人的には現行モデルの方が、ピックアップトラックにも似た若々しいアメリカンテイストに、オンリーワンなワイルドさがあると思うのです。
さらに新型は日本仕様ではガソリンモデルが廃止となるようです。きっとハイブリッドモデルの性能も上がるから、全体的に価格は上がるでしょう。新しい技術を迎えるのも楽しいですが、現行RAV4の性能は、必要にして十分以上。熟成された最後のモデルに長く乗るのは、賢い選択だと思います。
そんな現行RAV4は、「ガソリン」「ハイブリッド」「プラグインハイブリッド」の3つの4WDシステムが選べます。2リッター直列4気筒エンジン(171PS)を搭載するガソリンモデルでは、一番ベーシックな「ダイナミックコントロール4WD」と、後輪トルクを左右で制御して、より曲がるようにした「ダイナミックトルクベクタリングAWD」が選べます。またハイブリッド/プラグインハイブリッドはリアがモーター駆動の「E-Four」(イー・フォー)となり、前輪駆動から前輪20:後輪80までのトルク配分が可能です。

cap:走行状況に合わせて走行モードを選択できるドライブモードセレクト
少し難しい話になりましたが、一番ダイナミックなのは、文字通りガソリンモデルの「ダイナミックトルクベクタリングAWD」でしょう。オフロードはもちろん厳しい雪道でも、空転するタイヤを止めながら、駆動力を積極的にかけて、アクセルに合わせて力強く突き進んでくれます。
対してハイブリッド車が搭載する「E-Four」は、滑らかな制御が魅力。2.5リッターエンジンとリアモーターが織りなす加速(システム出力222PS)も確かに強力ですが、丁寧に扱えば雪道でも滑かな走りが可能です。前述の通り新型RAV4はハイブリッドのみのラインナップとなるため、ガソリンモデルのシンプルな走りを味わうならイマ。価格や納期においてランクルよりも手に入れやすい現行RAV4を、いまこそタフに乗りこなすのは、むしろクールだと思います。
(まとめ)
ということで今回は雪道にも強いクルマたちを紹介してきましたが、ウインターシーズンを走る上でクルマ以上に大切なのは、タイヤ選びと走り方です。タイヤ屋さんの繁忙期を考えると、もうスタッドレスタイヤに履き替えていい時期です。たとえ雪が降らなくても、低い気温や朝方の凍結路に冬タイヤは有効です。そういう意味では非降雪地域であれば、ここ数年注目されている、オールシーズンタイヤという選択もありでしょう。
あとは、自分のタイヤが何年目なのか? を知っておくこと。一般的には4年以上使い続けると、たとえ溝が残っていても、ゴムが固くなってきます。そして空気圧も、きちんと見ましょうね。指定空気圧に満たないまま、走っていたりしませんか?

TOYOTA RAV4(諸元はガソリン車Xモデル)
車両本体価格:¥3,237,300~(税込)
全長×全幅×全高(mm):4,600×1,855×1,685
エンジン:直列4気筒
総排気量:1,986cc
タイヤサイズ:225/65R17
燃料消費率(WLTCモード):15,2km/L
駆動形式:4WD
乗車定員:5名
https://toyota.jp/rav4/

執筆者Profile
山田弘樹
1971 年東京生まれのモータージャーナリスト。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。自動車雑誌「Tipo」の副編集長を経てフリーランスに。編集部在籍時代に出場した「VW GTi CUP」を皮切りにレース活動を始め、各種ワンメイクレースを経てスーパーFJなどのジュニアフォーミュラ、ツーリングカーではスーパー耐久にも参戦。この経験を活かし、“プロのクルマ好き”をスタンスに執筆活動を行う。またレースレポートや、各種イベント、インストラクターなどの活動も行っている。


