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みなさん、お香は好きですか?お香はもともと中東の地域で盛んだった文化。そこからヨーロッパへとわたり香水へ、アジアでは仏教の儀式に用いられる焼香へと発展していきました。日本は仏教の国ですから、仏壇にお供えするお線香が馴染み深いと思います。仏教の布教とともにインドから中国や各国へと広まると、日本では『日本書紀』に「推古3年(595年)、淡路島に沈水が漂着」との記述が。これが日本におけるお香のはじまりとされています。以降、日本では「祈りの香り」として広く親しまれてきました。
私も以前からお香は好きでしたが、母が亡くなった際に友人たちからお線香を贈ってもらい、仏壇に毎日お供えしているうちに一層、欠かせない存在となりました。ちなみに仏教では「食香(じきこう)」と言い、お線香の良い香りが亡くなった人にとっての食事にあたるそう。また、天に昇ってゆく線香の煙は、天上界と現世をつなぐ大事なツールとしての役目も果たしているといわれます。このように仏教におけるお香は亡き人を弔うものですが、現世に生きる私たちにとっても様々な効能をもたらしてくれます。
お香の効用として代表的なものといえば、なんといってもリラックス効果でしょう。優しく広がる香りは心と体を癒してくれますし、静かに立ちのぼる煙を見ているだけで安らぎます。また白壇、桂皮、丁子などのお香には防虫効果もあるので、夏場はこれらのお香を焚いて蚊取り線香代わりにするのもオススメ。
テクノロジーが発達した現代に生きる私たちは、便利さと引き換えに日々の生活に追われ、自分自身に目を向ける時間を忘れがちです。そんな中でささやかな癒しをもたらしてくれる「お香」というごちそう。好きな香りに包まれながら、ひと息できる時間を過ごしませんか?

Posted by
三角由美子 Yumiko MISUMI
東京・熊本でフリーペーパーの編集者を経て、フリーライターとして活動(熊本在住)。畳職人の長女として生まれ育ち、現在も畳のある暮らし。きもの・漆器・和菓子・お香・仏像・寺院巡りなど、ニッポンの伝統文化にトキめいています。
著書/『熊本カフェ散歩』、『くまもとの海カフェ山カフェ』