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日本で暮らしている皆さん、あなたの家に畳はありますか? 一部屋でもあれば嬉しいですが、フローリングだけのお宅も珍しくないでしょう。
畳職人の娘として生まれ、畳が当たり前にある生活をおくってきた私としては、日本の住まいから畳が失われていくことが、もったいなくて仕方ない。今も畳に座って、この記事を書いています。
日本文化といえばその多くは中国から伝わっていますが、畳は奈良時代に日本で誕生したもの。最初はゴザのような形状で座布団や寝具として用いられ、鎌倉時代頃から床材として使用されるようになりました。テレビの時代劇などで観たことがある方もいると思いますが、お殿様をはじめ武家や大名たちが暮らす屋敷には畳が敷いてあり、庶民の家は板張り。つまり、畳は上流階級が快適に暮らすための床材だったのです。江戸時代後期になると庶民の家でも畳が使われるようになり、明治維新後には一般家庭へ普及。しかし、住環境の欧米化やコスト的な面から、和室が段々とつくらなくなりました。
畳はもともと日本の風土に合わせて作られた床材だけあって、高温多湿の日本にぴったりです。い草でできた畳表(たたみおもて)の断面を見ると中がスポンジ状になっていて、梅雨の時期は不快な湿気は吸収し、乾燥する冬には水分を放出。自然の空調機として活躍してくれます。
また、汎用性の高さも見逃せません。お客様を招いたときは畳敷きの部屋で座卓を囲めば何人でも座れますし、誰かが泊まるときも川の字になればOK。ちなみに私は毎日、自宅の畳部屋で原稿を書いていますが、疲れたときは開脚などのストレッチをしたり、ゴロンと横になってお昼寝したり。大量の資料があるときも畳に広げて見比べられるから便利です。
自然素材だけに掃除を怠るとダニが発生する可能性もありますし、数年に一度は裏返しや表替えが必要ですが、メンテナンスをすれば長く使えるエコ素材。フローリングから畳部屋へリフォームするとなると下地工事が必要になるため、工事や費用を抑えたいときはフローリングの上に敷く置き畳を取り入れるのもオススメです。使えば分かる、心地よさ。畳の暮らしを始めてみませんか?

Posted by
三角由美子 Yumiko MISUMI
東京・熊本でフリーペーパーの編集者を経て、フリーライターとして活動(熊本在住)。畳職人の長女として生まれ育ち、現在も畳のある暮らし。きもの・漆器・和菓子・お香・仏像・寺院巡りなど、ニッポンの伝統文化にトキめいています。
著書/『熊本カフェ散歩』、『くまもとの海カフェ山カフェ』