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クルマを使ってお遍路旅に行ってきました。
四国八十八ヶ所の起点となる徳島県でレンタカーを借り、23札所までを3日間かけて制覇。「なーんだ。クルマで行くなら簡単じゃん!」そう思われたかもしれませんが。いやこれが、なかなかガッツな道のりでして(私も軽く見ていた)。
前半のうちは札所(お寺)同士の距離も近くて「これなら2日くらいで終わっちゃうかも!?」なんて余裕綽々(しゃくしゃく)でいたら、おっとどっこい甘かった。たとえば12番所・焼山寺(しょうざんじ)は、四国霊場で2番目に高い場所に本堂を有する札所。くねくねとした山道を上がっていくのですが、離合できる車幅もなく。クルマのハンドルを「10時10分」の角度で握りしめ、超安全運転を保ちつつ、なんとか到着。大変だったぶん、霧が立ち込めた幻想的な景色は、まさに桃源郷。おかげさまでシャバにどっぷり浸かってよどんだ心もキレイさっぱり浄化されました(いやすみません、言い過ぎました)。
さらに想定外だったのが、21番所・太龍寺(たいりゅうじ)です。本来ならロープウェイで一気にお寺まで到着するはずが、いざ乗り場に着いてみると、「メンテナンスのために本日から閉鎖します」との張り紙が。オーマイガッ!いや、オーマイ空海!!なんてこった。
とはいえ、はるばる飛行機で徳島まで来たからには、ここで引き返すわけには行きません。お寺に電話をかけてクルマで行ける道を教えてもらい(考えてみれば昔はロープウェイなんてなかったし)、グイッと遠回り。しかしながら、これがまた前述の焼山寺以上に険しい道で、トホホ。ガードレールもなければ道はガタガタ。うっかりクルマごと滑落したら恐らく誰にも気づかれないだろう道を、冷や汗かきかき運転したのでした。さらに駐車場からお寺までも急な登り道をひたすら歩くこととなり。。。いやぁ、久しぶりに良い運動が出来ました(^_^;)
ちなみに今回の旅で一番印象的だったのは、20番所の鶴林寺(がくりんじ)でした。ご接待用のお菓子に手を伸ばそうとしたときのこと。お菓子の箱と一緒に頭陀袋(ずだぶくろ)が置いてあり、お線香や数珠を入れるのにちょうど欲しいなぁ、と眺めていたら。「それもご接待の品なので、よかったらどうぞ♪」と納経所のおねえさん。
えっ!?これって売り物じゃないの??どーゆーこと〜!?
聴けば、安産祈願に訪れたマタニティーさんが無事、出産。お礼参りとして手作りの頭陀袋を「お遍路さんに」と置いていかれたそう。きっとお若いだろうに、なんてステキな心持ちの女性なのでしょう。ママになったばかりの彼女がお遍路旅をするのは、きっとまだ先のこと。いつか自分でもお遍路旅がしたい、その思いをこの頭陀袋に託したのかも。そう思うと、胸がジーン。この頭陀袋とあなたの想いも一緒に、必ずや四国八十八ヶ所を制覇しますよ!
ということで、なんとか飛行機の最終便に間に合う夕刻、ぎりぎりセーフで徳島の札所をすべて制覇。
お遍路旅って人生のようだと言われますが、まさにその通りです。天候が変わったり険しい道があったりと、思うようにはいきません。そんな中でも、諦めずに到着してみれば、お寺で労をねぎらう言葉をかけてくださったり、ご接待としてお菓子をいただいたり。小さな親切や交流を重ねながら「よし、また頑張ろう!」とやる気スイッチが入ります。
それに、何よりもこのお遍路旅の目的は、大切な人を弔うためのもの。
12月は私の誕生月である一方、親友・祖父・メンターという大切な存在を失った感慨深い月でもあります。
今年1月には10年間、病に寄り添ってきた、かけがえのない母を亡くしたこともあり。なんとしても、徳島23番所まで辿り着きたかった。たくさんの人の想いや命を受け継ぎながら、生かされていることに感謝する旅でもありました。
こうして一人ひとりがさまざまな思いを持って一歩一歩進んで行くなかで、自分にとって大切なものと向き合う機会となる。それが、何百年にもわたってお遍路旅が愛されてきた理由なのかもしれません。
クルマで気軽にお遍路旅をできる今。ときには寄り道してご当地グルメや温泉に興じてみたり。現代ならではのドライブお遍路旅を、これからも楽しんでまいります!
そんなこんなで、2022年のみすみんコラムは、ひとまずラスト。
みなさま、どうぞ良い年越しをお迎えくださいませ〜♪


Posted by
三角由美子 Yumiko MISUMI
東京・熊本でフリーペーパーの編集者を経て、フリーライターとして活動(熊本在住)。畳職人の長女として生まれ育ち、現在も畳のある暮らし。きもの・漆器・和菓子・お香・仏像・寺院巡りなど、ニッポンの伝統文化にトキめいています。
著書/『熊本カフェ散歩』、『くまもとの海カフェ山カフェ』