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江戸時代からの老舗旅館「千歳」グループの1つとして、2001年にオープンした「天橋立ワイナリー」。日本三景とも呼ばれる天橋立の、ちょうど股のぞきをして眺める若狭湾の内海「阿蘇海」を借景に、4ヘクタールのぶどう畑が一面に広がります。土壌作りから開発し、ワイン用のぶどうを栽培。年間6万本ものワインを出荷しています。

宮津の資源で宮津のオリジナルワインを作る
千歳グループは宮津・天橋立地域で長く旅館を経営してきました。旅館の当主であり、ワイナリーの代表でもある山崎社長は、「地域に貢献したい」「天橋立の観光振興となるものを」という思いから、北海道で教わったワイン作りをこの地に持ち込むことを決めました。「欧米ではその土地を知るなら、その地で生まれたワインを楽しむというほど、ワインを通したコミュニケーションが活発なんです」と語るのは専務の藤原さん。目指したのは、地元の食材とのマリアージュを楽しめるワイン作りでした。

宮津という場所を活かしたぶどう栽培
「ワインの味は畑で決まる」と言われるように、ワイナリー作りの第一歩は「畑作り」。今では、世界でも珍しい「海とぶどう畑」の見事な景観を楽しめるぶどう畑一帯ですが、当時は水田でした。水田を畑にすることは簡単ではなく、また、海辺では寒暖差が出にくいため、ぶどう栽培には適していないということも懸念されました。しかし宮津は背後の山からの風で寒暖差が生まれたため、ワインに適したぶどうを栽培することができたのだそうです。さらに、当時大量に廃棄処分していた、阿蘇海で自然堆積する牡蠣殻を土壌作りに再利用し、ミネラル分を含んだ栄養度の高い土を作ることができました。通常では不適と思われる宮津という土地こそが、ワイン作りを盛大に後押ししたともいえるのです。

栽培しているぶどうは約30種。その大半が未来のワインのための試作用で、現在天橋立ワインとして使用されているのは5~6種です。赤はサテラビやレゲント、ロゼ・白ではセイベルといった品種で、宮津で育てるのに適したものを厳選しています。繊細な味わいとすっきりとキレイな香りが特徴で、一緒に味わう食べ物をうまく引き立てることができます。地元の農業振興に貢献したい、宮津が育てた野菜や海産といった食材にこそ合うワインを作りたいと、地元食材との相性を考えた品種を厳選しているのです。

ワインをより身近に、もっと親しんでもらいたい
育ったぶどうは品種によって収穫時期が異なります。こちらで一番早いものは、夏に収穫して10月に出荷。一番長く熟成させるワインで3年程度となります。「価格含め、親しみやすいワイン作りをしたい」との思いから、リーズナブルに販売でき、そして何より飲みやすくおいしいワインを作るべく、土作り、栽培、収穫のタイミングなど様々なこだわりを持っています。収穫時は自社の様々な部署の人たちが一斉に協力し、一房ずつ状態を確認しながら手摘みをしているのだそうです。
ワイナリーは見学が可能です。入口すぐの醸造タンクでは大小のタンクが並び、よく見ると発酵中のタンクはブクブクと泡が立っているのがわかります。地下セラーには樽熟成・瓶熟成のワインはじめ創業当時からのワインがストックされています。螺旋階段を降りると、まるで異国に来たようなおしゃれな地下空間ですよ。「コロナ禍ということもあり、ワイナリーは現在自由見学となっています。何か質問などがあれば、気軽にスタッフに問い合わせてくださいね」。

併設のレストランでマリアージュを楽しんでみても
「地域の食材に合わせるためのワイン」として作られたワインは、お肉だけでなく鮮魚、そして野菜との相性も考えられています。「一つひとつを目利きして収穫したぶどうの旨味を、あますところなく使って丁寧に造っています。どうぞ宮津の野菜や海鮮と合わせるときの選択肢の一つにしてください」とその相性の良さには自信が見られます。2階には天橋立とぶどう畑を眺めながら食事ができるレストランが。さまざまなお料理とその日の日替わりワインを飲み比べができるほか、ショップで買ったお好みのワインもテイスティングができます。ぜひ地場野菜とのマリアージュを楽しんでみてください。
