山形県上山市で自家農園産、県内産にこだわった「土地の味」を提供。「タケダワイナリー」

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「タケダワイナリー」がある山形県上山市は、ブドウ栽培が盛んな地域です。気候、風土ともに果物を栽培するのに適しているため、食用はもちろんワイン用のブドウを作る農家も数多くあります。そこでタケダワイナリーがワイン造りを始めたのは、1920年(大正9年)。現社長の岸平典子さんは、5代目にあたります。創業当初から商品はすべて自家農園産もしくは山形県産のブドウを使用。「良いワインは良いブドウから」をモットーに自社でブドウ栽培から醸造、販売まで一貫して行なっています。

ブドウの良さを最大限に引き出すワインを目指して

ブドウの良さを最大限に引き出すワインを目指して

ブドウを自家栽培しているワイナリーは少なくありませんが、タケダワイナリーのように“土づくり”から始めたところは珍しいのではないでしょうか。15ヘクタールある畑を20年かけて土壌改良。ブドウがイキイキと育つ土にするために、化学肥料を使わずできるだけ自然に近い環境にし、「土地の味」が出るような栽培を目指しています。

ブドウはよく見る棚栽培ではなく、垣根栽培で。1本あたりの収穫量は少なくなりますが、風通しや日当たりが良くなるので、旨味が濃縮されたブドウができるそうです。約4万本のブドウの木があり、平均樹齢は30年。中には樹齢70年にもなる古木もあります。収穫は手摘みで行ない、ひとつひとつ品質を確認しながら醸造に使うブドウを選別。8月に白ワインになるデラウェア種の収穫が始まり、そこから秋にかけて収穫の最盛期に。同時進行で醸造も始まるので、1年で最も忙しい時期になります。

「スタッフは、栽培も醸造もすべて担当します。栽培から携わればブドウの品質を見て、醸造の方法を考えられるので、ブドウの良さを最大限に活かすことができる。そう考えているからです。同じ商品であってもヴィンテージが違うと、どうしても味に変化があります。ブドウにこだわっている以上、それもひとつの魅力として楽しんでもらいたいと思っています」とは、取締役専務の岸平和寛さん。ブドウをこの地で醸造することへの強いこだわりもあります。
「ブドウは穀物と違って収穫したそばから少しずつ傷んでいきます。ワインの味を決める素材をどれだけ新鮮な状態のまま醸造できるか。それを実現するために、自家農園産、県内産にこだわってワインを造り続けています。創業当初から守り継がれているこの“軸”だけはずっと変わらずに引き継いでいかなければいけないことです」

果実味豊かでエレガントなワインに

果実味豊かでエレガントなワインに

スタンダード商品は、山形県産のデラウェア種とマスカット・ベリーA種を使用した「タケダワイナリー」シリーズ。こちらの一部商品は酒店や道の駅などでも販売され、手に入りやすいことから地元ファンからも長く愛飲されている名品です。糖度の高い完熟したブドウが使われ、非常に飲みやすいのが魅力となっています。
同じシリーズの中でも「サン・スフル」は、酸化防止剤を使用していないもの。赤、白のほか今年はロゼも発売され、人気商品となっているそうです。
「デラウェア種は、100年以上前から山形で栽培されているブドウで、マスカット・ベリーA種は、日本の土壌に合わせて品種改良された日本のブドウ。その良さを見直し、ベーシックラインでは拡充して使用しています」

タケダワイナリーの真髄ともいえる「ドメイヌ・タケダ」シリーズは、自家農園産のブドウのみを使用。樹齢70年のマスカット・ベリーA種100%を樽熟成した「ベリーA古木 樽熟成」は、繊細で奥深い重厚な味わいとなっています。

自家農園産のブドウが最高に達した年のみ販売される「シャトー・タケダ」は、とくに高い評価を受けています。さらに自家農園産のシャルドネ種100%を使った「キュベ・ヨシコ」は幻の逸品といわれ、今年発売された2012年ヴィンテージは即完売に。
「どちらも全国の愛好家の方から好評いただいています。少し前は、ボルドーのどっしりしたワインの人気がありましたが、近年はブルゴーニュのように滋味深く旨味の広がるワインの需要が高まっています。弊社でも果実味が豊かでエレガントなワインを造ることが多くなっていますね」

これからのブドウは気候との戦い

これからのブドウは気候との戦い

自家農園を持っているタケダワイナリーで近年の課題とされているのは、気候変動とどう向き合っていくのか。上山市は、果樹を育てるのに適した土地といわれていましたが、夏の暑さや季節外れの霜、突然降り出す雹など、想定外のことに悩まされているそうです。
「30年前の上山市は、カベルネ・ソーヴィニョン種を育てる環境としては寒すぎると言われていました。それが温暖化の影響でちょうど良くなっているんですね。フランス北部の品種を作っていたものを今度はより南の方の品種にするなど、気候変動に合わせてどう対応していくかが大きな課題ではあります」

加水をしないワインは原料が命。自家農園産にこだわりをもつタケダワイナリーとしては「良いブドウを作る」ことが何よりも重要となります。
「ワインの場合、ブドウが味の8割を決めます。醸造のテクニックでなんとかできるのは2割程度しかないんです。社長が理念として掲げている『良いワインは良いブドウからしかできない』を継続していくためにも、気候をうまく利用して良質なブドウを作り続けていきたいです」

タケダワイナリー

住所:山形県上山市四ツ谷2-6-1
TEL:023-672-0040
URL:http://www.takeda-wine.co.jp/
営業日:4月1日〜11月30日(8月13日〜16日は夏季休業)、12月1日〜3月31日は平日のみ(12月29日〜1月4日は年末年始休業)
営業時間:10:00〜12:00/13:00〜17:00
見学受付時間:10:00〜11:30/13:00〜16:30(2022年7月時点では試飲は休止中)
見学料:無料(要予約)

(文・写真:中山夏美)

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