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「ゼリーフライ」と聞いてどんなものを思い浮かべますか?「ゼリーを揚げる……?」「ぷるんぷるんの食感なのかしら?」と、頭にハテナマークが浮かぶ人も多いはず。ユニークに富んだB級グルメのようなその正体は、ゼラチンで固めたゼリーのフライではなく、なんと「おからコロッケ」。小判形のような見た目から「銭フライ」と呼ばれたのが次第に訛って「ゼリーフライ」に転じたそう。奇想天外な食べ物を想像した人にとっては些か期待はずれな答えだったかもしれませんが、そのチャーミングな名前の甲斐あってか、「ゼリーフライ」は埼玉県行田市で昔から愛されつづけているソウルフードです。
「ゼリーフライ」の歴史は諸説ありますが、日露戦争時に中国から伝わった「野菜まんじゅう」がルーツだと言われています。おからとじゃがいもを混ぜ合わせたものにネギや人参をいれて、衣をつけずに素揚げします。最後に酸味のきいたソースを絡めて完成。タンパク質やビタミンなどの栄養を手軽に摂取できることから、労働者のおやつとして食べられることが多かったそう。特に行田市は昭和初期に足袋産業がピークを迎え多くの女性が工場で働いていました。女工さんたちは休憩時にゼリーフライを好んで食べていたようです。
行田市には今もなお、ゼリーフライを提供しているお店が点在しています。「かねつき堂」や「たかお家」のような老舗もあれば、そば屋やカフェ、豆腐屋でも味わえます。1つ100円〜200円程度で食べられるので、城下町を散策しながら複数のお店で食べ歩きをするのがおすすめです。また、自宅で簡単に作れるということも長年親しまれてきた理由の一つ。カリカリふわふわに仕上げたければ、卵と牛乳を少し加えることがポイント。
おからと野菜でできているので揚げ物特有の油っこさが少なく、甘辛いソースがアクセントとなってあとをひくおいしさです。穀物と野菜が原料のため、ヴィーガンやベジタリアンの方むけのグルメとしても注目されつつあるとか。歴史深い郷土食がヴィーガン料理界を席巻する日がくるかもしれません。グローバルに広めていきたい温故知新の「埼玉うまいもの」です。

Posted by
さくらい ちさと
埼玉県に拠点をおきつつ「旅するフリーランス女将」として、旅をしながら、地域のヒトモノコトが「らしく」あるように、編集・演出・調整するお仕事をしています。ライター歴は5年。執筆する人やもの、場所の個性が伝わるように心がけています。