VOL.2 岐阜・美濃和紙の産地を訪ねて

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皆さん、こんにちは。第2回目となる今回は、2014年にユネスコ無形文化遺産にも登録された「本美濃紙」の産地、岐阜県は美濃市です。埼玉の細川紙・島根の石州半紙とともに「和紙:日本の手漉和紙技術」として世界の文化遺産となった本美濃紙に代表される美濃和紙とは、美濃市で製造される和紙のこと。昔から紙の原料である良質な楮(こうぞ)が多く採れたこの地域には、高い技術による美しくて頑丈な和紙作りが1300年も前から伝承されてきました。日本の楮は光沢があって白く美しい和紙になるそうで、流し漉きと呼ばれる日本独自の伝統技法により紙の強度も上がると高く評価され、世界遺産に登録されたのです。

ちょうどその頃です。2014年から6年半にわたり、和紙や刃物といった伝統産業が集積する岐阜県産品から、選りすぐりのプロダクトを集めたライフスタイルショップの企画運営に携わらせてもらいました。そして美濃和紙活性化協議会のアドバイザーも務めさせてもらいました。原材料である楮の栽培に力を入れ、継承する職人を育て、海外へも発信できる美濃和紙の商品化などに関わる中で、美濃和紙の美しさはもちろんのこと、丈夫さや調湿性能といった素材としての可能性を深く知りました。東京オリンピックの賞状や、国宝級の古文書や絵画の修繕にも使用されているのは周知のことです。

和紙がインテリアプロダクトとして世界の注目を集めたのは、誰もが一度は目にしたことのあるイサム・ノグチが手がけた照明「AKARI」シリーズです。彫刻家だった彼は岐阜提灯から発想を得て、自由に変化する「光の彫刻」として作品を発表しました。それは部屋全体をぼんやりと灯すだけでなく、下の穴から落ちる光の繊細さまでを表現したものでした。こうした日本的で曖昧な光と形は他にないとして、1950年代のミッドセンチュリー時代を先導したハーマンミラー社やヴィトラ社が採用。現在もヴィトラ社のミラノサローネにおけるメインビジュアルを飾る照明は「AKARI」です。海外にない日本の文化として評価されているのではないでしょうか。
最近では、2008年に深澤直人さんが和紙をブランディングしたことから再び注目され、いろんな素材としても起用されるようになりました。まだまだいろんなプロダクトに変化していく素材なんだと思います。プラスチックに代わる容器など、SDGsでも期待されていますよね。皮でもなく塩ビ系でもない、土に帰る和紙は優秀で品格ある素材として、みんなに重用される日が来ることを願います。

岐阜県の中心部に位置し、清流長良川と自然豊かな山々に囲まれた美濃市。江戸時代からの商家が軒を連ねる「うだつの上がる町並み」の美しさには、僕も感銘を受けました。ここで25年前から続く「美濃和紙あかりアート展」では幻想的な世界が広がります。ぜひ足を運んでみてはいかがでしょう。

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鶴田 浩 / リアルスタイル代表

リアル・スタイル(株)代表取締役。NPOメイド・イン・ジャパン・プロジェクト理事。名古屋工業大学非常勤講師。建築・空間プロデューサーとして従事する中、1年半に渡り欧米やアフリカを旅して日本の素晴らしさに気づく。2002年にライフスタイルショップ「REAL Style」をオープン、2006年にNPOメイド・イン・ジャパン・プロジェクトを立ち上げ、以来、日本の生活文化向上と全国のモノづくりネットワーク構築に尽力している。

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