VOL.32 古き「商いの心」が息づくコンパクトシティ・富山市

 行き過ぎた郊外開発に歯止めをかけ、住民生活の利便性や行政サービスの効率を高めることを狙いに、中心市街地に住宅や公共施設などを集約する「コンパクトシティ」政策の実現に向け、国や地方自治体の動きが活発化しています。

 国は、地方都市で暮らす高齢者の生活維持や行政コスト削減のため、コンパクトシティ政策を後押しすることから、平成30年3月、本コラムでも紹介した高松市や金沢市、熊本市など32市町をモデル都市に選定。地域の活力を維持し、集約効果を高めるための先進的な取り組みを各地に広めようとしています。

 今、多くの自治体で人口が減っているのに、街の拡散が止まらない。このままでは財政負担が増して都市は衰退し、自治体の廃止が現実味を帯び始めかねない状況なのです。
 しかし、コンパクトシティを打ち出しながらも、郊外開発は黙認し、開発が続く現実があるなど、「内も外も」の矛盾を多くの自治体が抱えています。

 今号では、コンパクトシティの優等生でありながら、一方で前述の矛盾も抱えている富山市を紹介します。

 富山市といえば、「日本の道100選」にも選ばれた、八尾の豊かな町人文化を今に伝える諏訪町本通り。ここは、毎年9月1日~3日に開催される「おわら風のお盆」が、300年あまり踊り継がれている歴史と日本の風情のある町です。

 その他にも、2008年にスターバックスのストアデザイン賞最優秀賞を受賞した「世界一美しい」スターバックスコーヒーや、若い方はご存知ないかもしれませんが、テレビ番組「料理の鉄人」で「フレンチの鉄人」こと坂井宏之さん監修のレストランが常設する、緑と水辺の美しさ、夜のライトアップが幻想的な「富岩運河環水公園」も人気の観光スポットです。

今回の富山市では、「Drive! NIPPON」サイトとは相対してしまいますが、富山市のコンパクトシティ形成の根幹である「富山ライトレール(LRT)」について、触れさせていただきます。また、筆者の本業が公共交通政策であることから、注目をしている都市でもあるのです。

 富山ライトレールは、持続可能な都市経営を標榜する市長が2002年から旗を振り、06年に生まれた日本で最も新しい路面電車の路線です。ライトレールとは、輸送力が軽量な鉄道システムのことを指します。

 路線は、富山駅北口から北へ向かい、日本海側の岩瀬浜までの7.6km区間を運行しているのですが、特筆すべきは、岩瀬浜と奥田中学校前間が元JR富山港線であること。赤字に苦しむ地方鉄道のローカル線の一つの再生方法として、ローカル線から路面電車への切り替えというのは、他に例を見ないもので、富山ライトレールの経営が例年順調に推移していることから、地方鉄道のお手本であります。

 さらに、驚きなのが昨年の10月から新たに「信用降車」(ほか広島電鉄・養老鉄道は既実施)の終日化を開始しました。
 欧米ではごく一般的な方式でありますが、日本では、不正乗車の温床になるとの懸念から、この方式を採用しているのは極めて少ないのです。
 「信用降車」とは、乗客が自主的にICカードをセンサーにかざし、運転士がそばにいない後方のドアから自由に降りられる仕組みです。今までは、運転士がそばにいる前方のドアの前で運賃を支払ったり、ICカードをかざしたりしてから降車していました。

 「信用降車」の導入理由は、ICカード定期券の利用率が高まったことによる乗客の利便性向上の一貫。不正乗車には3倍の運賃設定をしていますが、駅や車内での係員のチェックは特に行っていません。そもそも片道200円均一で、3倍といっても600円。文字通り、お客様を信用しての実施ということです。

 この信用については、300年以上も前の昔から、全国各地を訪問し薬と安心をお届けしている「売薬さん」という、今日の富山県産業の礎を築いた精神も影響しているのではないでしょうか。

 それは、独自の販売システムである「先用後利」。
 医療が普及してしない当時、いつ必要になるか分からない薬を数種類も常備しておくことは困難であったことから、先に薬を預け、次回訪問時に使用した分の代金だけを支払うという商法。これは非常に利便性が高く、地域の人々に広く受け入れられ、毎年、定期的に、継続的に訪問することが、信頼関係を深めたものです。

 富山県人の脈々と続く信用、信頼関係から築かれ、制度として成り立つのでしょう。
 ちなみに、筆者の地である山梨県は、「甲州商人の通ったあとはペンペン草も生えない」という言葉があります。意味合いは、甲州人は油断ならないので心を許してはならない(汗)

 富山ライトレールという公共交通について触れさせていただきましたが、富山県は持ち家住宅率全国1位、さらには住宅延べ面積でも全国1位。筆者も現地をドライブの際に驚いたのですが、とにかく車窓から見えてくるのは豪邸ばかりです。

 富山市のドライブにお勧めは、100余年にわたり伝え継がれる「ます寿し」の歴史や工程を学べ、食事もできる「ますのすしミュージアム」周辺。田園風景の奥にそびえる雄大な立山連峰を仰ぎ見ることができます。

 また、ご当地ラーメン「富山ブラック」の発祥は、富山市中心部の特定の店舗発祥です。

今後の土橋の見聞予定地及びイベント出展予定

平成30年5月23日 山梨学院大学「やまなし観光カレッジ事業」講師
平成30年6月2日 2018年度第43回東海大学高等学校連合会in山梨(甲府市)
平成30年6月20日 甲府鳥もつ煮でみなさまの縁をとりもつ隊創設10周年キックオフ
パーティー
平成30年7月14、15日 美味い都市「津ぎょうざ小学校」合同まちおこし合宿(津市)
平成30年7月18日 山梨県立大学「山梨の観光」講師

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土橋 克己/山梨県甲府市役所職員

1973年生まれ、甲府市出身。中央大学商学部(硬式野球部)卒業。甲府市役所に勤務する傍ら2008年、「甲府鳥もつ煮でみなさまの縁をとりもつ隊」結成。10年、ご当地グルメによるまちおこしの祭典「B-1グランプリin厚木」で最高賞のゴールドグランプリ獲得。11年、NPO法人こうふ元気エージェンシー設立。2014年、「甲府ん!路地横丁楽会」を立ち上げ、甲府市中心街の路地―横丁文化の魅力を発信する活動に取り組む。

【土橋克己フェイスブック】
https://www.facebook.com/katsumi.dobashi
【甲府鳥もつ煮でみなさまの縁をとりもつ隊ホームページ】
http://www7b.biglobe.ne.jp/~torimotsu/
【甲府ん!路地横丁楽会フェイスブックページ】
https://www.facebook.com/kofunrojiykocho?fref=nf

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