VOL.29 武田信玄公が歴史の教科書から消える?!について考えたこと

全国の高校・大学の教員ら約400人が所属する「高大連携歴史教育研究会」が、高校の歴史教科書に収める用語を半分に絞る「精選案」をまとめました。

 研究会によりますと、高校の日本史と世界史の主な教科書に収録されている用語はそれぞれ約3400~3800語。大学入試で教科書に出ていない言葉が出題されると、次の教科書改訂時に追加される形で増え続け、1950年代の3倍近くになっているそうです。
 このため歴史教育では、教科書に収録した用語の暗記中心の教育が行われることが問題となり、思考力を育てる内容に変えることが狙いのようです。

 確かに、野球ばかりの高校生活だった筆者の記憶でも、古代から始まった授業が近現代まで到達せずに終わった記憶はあります。

 こうしたことから、精選案では日本史1856語、世界史1835語にして、「武田信玄」「上杉謙信」「吉田松陰」「坂本竜馬」「クレオパトラ」「ガリレオ・ガリレイ」「マリー・アントワネット」などは、「実際の歴史上の役割や意味が大きくない」などとして省かれました。
 「坂本竜馬」に至っては、「知らなくても明治維新は理解できる」ということらしいですが、SNSでは「明治維新は坂本竜馬を抜きには学べない」などの意見が相次ぐなど波紋が広がっています。

 ここで当然気になるのが、筆者が住む甲府の英雄「武田信玄」公が、生涯のライバル「上杉謙信」とともに省かれていることです。
 「実際の歴史上の役割や意味が大きくない」と研究会が判断していますが、果たしてそうなのでしょうか。
 
 実際の歴史上の役割としては、織田信長が時の天皇と結んで将軍職をなくし、京都から足利義昭を追い払ったことで、室町幕府が滅亡していますから、いくら織田信長が「武田軍の強さは天下一」と恐れていても、信玄公の室町時代の歴史的役割は薄いかもしれません。
 しかし、「意味が大きくない」という評価については、反論させていただきたいと思います。信玄公は戦国時代のなかで、いちはやく金山開発に取り組み、日本で初めての金貨「甲州金」を流通させました。また、水洗トイレを使っていたことでも知られています。排泄後に鈴を鳴らすと、風呂場の残り湯が桶で運ばれて来るという、水をリサイクルしたエコなトイレでした。戦上手でありながら領内政策も怠らず、家臣、領民を大切にし、人心掌握に力を尽くした信玄公。現代で言うと、抜きん出た才能を持つ〝政治家〟だったのです。

 特に突出しているのが、治水政策。
 昔から「河を治める者が国を治める」と言われていますが、平地の少ない甲斐の国では言葉のとおり、治水の成功こそが領国の安定となります。
 信玄公の治水技術「信玄堤」は当時、ハイテクに属し、江戸時代には「甲州流河除法」と称されました。日本における治水技術の始祖と謳われ、河川工学の礎となり、完成後400年以上たった現在でも治水機能を果たしています。

 これが「歴史上の意味が大きくない」というくくりに入るのでしょうか。
 甲府市民が「信玄公」と尊称で呼ぶのと同じように、今回省かれる対象となっている人物に吉田松陰がいます。「松陰先生」と呼ぶ山口県萩市民も、私と同様の感情を持っているのではないでしょうか。

 萩市は、近代日本の夜明けを告げた人々を数多く輩出しており、その中でも「松下村塾」を主宰した吉田松陰は、多くの若者を教育した幕末の先覚者です。
 その松陰先生をお祀りする松陰神社の一角には、昭和43年に明治百年を記念し、当時の佐藤栄作総理大臣の筆によって「明治維新胎動之地」と刻まれた大きな石碑があります。

 確かに、研究会が提案する脱暗記については大いに理解が出来ます。
 というのも、文部科学省では、小中高で「主体的・対話的で深い学び」への転換を推進。私には縁遠かった大学入試センター試験が、3年後には大学入学共通テストに代わります。そのテストでは、思考力や記述力が重視され、見たことのない資料に関する問題について、基礎知識を活用して解く力が試されるのですから。

 ただ、全国それぞれのまちには偉人たちが築いたものがあります。
 それは、その土地の魅力的な景観や自然環境、社会の変化に伴って育まれた独自の文化です。従って、「実際の歴史上の役割や意味が大きくない」という偉人は誰一人いません。教科書に載る、載らないにかかわらず、今後、どのような形でそれを後世の子どもたちに伝えていけばいいのか。私たち大人が、改めて考えていく機会なのかもしれません。

 まだ決定ではない研究会の「精選案」。研究会運営委員長の桃木至朗大阪大学教授によると、「案はあくまでも入試で用語を出題するかどうかの基準で、まだ変更はあり得る。案以外の用語を教科書で扱っても良く、むしろ偉人などを重点的に教えることは推奨すべき」とのこと。今後どのように進んでいくのか、甲府市民・山梨県民ばかりでなく、甲府駅南口に威風堂々と座る信玄公像も静かに見守っています。

 ちなみに今回のドライブ地はもちろん、「明治維新胎動之地」の山口県萩市ですね。

今後の土橋の見聞予定地及びイベント出展予定

平成30年2月24、25日 愛Bリーグフォーラムin四日市
平成30年3月3日 こうふ発酵マルシェ出展
平成30年3月3日 サッカーJ2リーグ ヴァンフォーレ甲府ホーム開幕戦出展
平成30年3月17日 甲府ん!路地横丁フォーラム
平成30年3月18日 第7弾 やまぼこ探検隊
平成30年4月7日 信玄公祭り「津ぎょうざ小学校」と合同出展

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土橋 克己/山梨県甲府市役所職員

1973年生まれ、甲府市出身。中央大学商学部(硬式野球部)卒業。甲府市役所に勤務する傍ら2008年、「甲府鳥もつ煮でみなさまの縁をとりもつ隊」結成。10年、ご当地グルメによるまちおこしの祭典「B-1グランプリin厚木」で最高賞のゴールドグランプリ獲得。11年、NPO法人こうふ元気エージェンシー設立。2014年、「甲府ん!路地横丁楽会」を立ち上げ、甲府市中心街の路地―横丁文化の魅力を発信する活動に取り組む。

【土橋克己フェイスブック】
https://www.facebook.com/katsumi.dobashi
【甲府鳥もつ煮でみなさまの縁をとりもつ隊ホームページ】
http://www7b.biglobe.ne.jp/~torimotsu/
【甲府ん!路地横丁楽会フェイスブックページ】
https://www.facebook.com/kofunrojiykocho?fref=nf

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