COLUMN

土橋克己の「地方見聞録」

炭鉱マンの魂が息づくまち田川で、ご当地グルメと伝統の祭りを堪能

『月が~出た出た~月が~出た~ヨイヨイ』
 現在、盆踊りの最もスタンダードな楽曲として、全国に浸透しているこの曲は皆さんもよくご存知でしょう。

 実はこの唄、もともとは炭鉱(坑)労働者によって唄われた民謡で、その名も「炭坑節」。福岡県に伝わる民謡です。
 かく言う私も、ある団体と出会う前は、日本の民謡であることくらいしか知りませんでした。

 「石炭鉱(坑)業」は、明治初期に産業として成立し、日本の経済発展及び国民経済の向上に大きく貢献しました。
 鉄道開通など文明開化が進展した明治初期の国内の石炭生産地は、北から北海道の白糖、茅沼、幌内、夕張、本州の宇部、常磐、九州の筑豊、三池、長崎といった地域であり、その後各地に広がっていきました。

 今回紹介するのは、飯塚、直方と並んで筑豊を代表するまち。筑豊最大の炭都として栄え、また冒頭の「炭坑節」発祥の地である福岡県「田川市」です。

田川市石炭記念公園は、三井田川鉱業所伊田坑の跡地に整備されました。炭坑節歌詞中の煙突は、現在も公園内に保存されている2本の煙突の事と言われております。
同じく公園内にある田川市石炭・歴史博物館では、かつて日本のエネルギーを支えた筑豊炭田の歴史と炭坑により栄えた当時の様子を知ることができます。
 また、日本初の世界記憶遺産となった山本作兵衛氏の炭坑記録画・記録文書などを多数所蔵し、その一部を展示※しています。

 近代日本を支えた田川ですが、約450年もの歴史と伝統を誇る祭礼【川渡り神幸祭(かわわたりじんこうさい)】(写真)が、毎年5月第3土曜・日曜日に開催。メインの川渡り神事では、神輿2基と山笠11台が、水しぶきをあげながら豪快に彦山川を渡ります。

 この勇壮な祭りは、伊田地区で疫病が流行ったとき、風治八幡宮に祈願成就山笠を立て、ご神幸祭を奉納したことに始まると伝わります。荒ぶる神「須佐之男尊」が宿る御幣を山笠の棒の先にくくり、山笠が川で暴れることで悪霊が水に流されるとされています。

 実はこの【川渡り神幸祭】も炭鉱(坑)の栄枯盛衰の影響を大きく受けており、昭和40年代になると、炭坑が次々と閉山されて住民が流出。祭りも衰退の一途をたどり、最も多いときで14台だった山笠は、わずか2、3台という、もはや風前の灯火状態となってしまいました。
 追い討ちをかけたのが、昭和40年代後半、担ぎ手の代わりに神輿を乗せる台車を作り、それで神輿が川を渡るという苦肉の策・・・・・言葉が悪いですがこの〝暴挙〟により、もちろん祭りは盛り上がらないものとなりました。

 そんな中で昭和49年、祭りの賑わいを復活させ、田川活性化の起爆剤にしようと、田川青年会議所を中心に「みこしをかつぐ会」が結成。再び神輿を担ぎ始めると、それに呼応した地域住民も盛り上がりをみせ、山笠が1台、2台と増えていきました。現在では11台が大いに神幸行列を盛り立てています。

 このような地元住民による自発的、主体的なまちづくりの土壌がある田川市では、2本目の矢として、田川愛あふれる熱いメンバーが市民活動団体「田川ホルモン喰楽歩」を設立。田川、いや日本の礎を築いた炭鉱(坑)マンがこよなく愛したご当地グルメ「田川ホルモン鍋」を活用し、愛する故郷を復活させる活動を行っています。

 「田川ホルモン鍋」とは、焼肉のタレで下味をつけたホルモンとたっぷりの野菜を、真ん中が窪んだ鉄板で炒め煮にしたもの。博多名物「もつ鍋」とは味付けや調理方法が全く異なります。
 「田川ホルモン喰楽歩」という名称ですが、田川のホルモンを「楽」しく、「喰」べるために田川を訪れ、まちを「歩」いて欲しいためのネーミングではないでしょうか。

 住民の病を治めるために始まった祭礼を450年間守り続け、大規模な炭鉱災害が度々発生する危険な石炭の採取に勤しんできた田川人ですから、また何かアクションを起こし、さらにまちを元気にしていくことでしょう。

 前述の【川渡り神幸祭】の山笠は通常「やまがさ」とよび、「山車(だし)」とも言われます。
 しかし、地元田川では山車と呼ぶのは稀であり、山笠を「やま」と呼びます。
 炭坑が閉山しても、市民の誇りの山笠(やま)はある。
 動くはずのない山(山笠)を、勇壮に動かす田川にドライブニッポンです。

今回のコラムにあたり、日本経済発展のために石炭鉱(炭)業に携わった先人たちのご努力とご労苦に深く敬意を表すると共に、多くの尊い犠牲に対してご冥福をお祈り申し上げます。

★【川渡り神幸祭】
開催日時:平成29年5月20日(土)・21日(日)


※平成28年1月から1年以上に亘って、世界記憶遺産である「山本作兵衛コレクション」の適切な管理・保存のために大規模な改修が行われておりましたが、平成29年4月29日(祝)に再オープンします。
のイメージ写真

今後の土橋の見聞予定地及びイベント出展予定

平成29年4月15、16日 ウイスキーフェスティバルin萌木の村@清里(山梨県北杜市)
平成29年4月22、23日 サイカイタク!プロジェクト(山梨県甲府市~埼玉県秩父市)
平成29年4月29日 伊那ローメン春祭り(長野県伊那市)
平成29年4月30日 駒ヶ根ソースかつ丼祭り(長野県駒ヶ根市)
平成29年5月13日 第33回全国自治体政策研究交流会議in山梨甲府大会(講演)
平成29年5月20、21日 美味い都市団体「津市民!甲府ツアー」
平成29年5月27、28、29日 福岡市・久留米市視察(福岡県周辺)

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土橋克己/山梨県甲府市役所職員

1973年生まれ、甲府市出身。中央大学商学部(硬式野球部)卒業。甲府市役所に勤務する傍ら2008年、「甲府鳥もつ煮でみなさまの縁をとりもつ隊」結成。10年、ご当地グルメによるまちおこしの祭典「B-1グランプリin厚木」で最高賞のゴールドグランプリ獲得。11年、NPO法人こうふ元気エージェンシー設立。2014年、「甲府ん!路地横丁楽会」を立ち上げ、甲府市中心街の路地―横丁文化の魅力を発信する活動に取り組む。

【土橋克己フェイスブック】
https://www.facebook.com/katsumi.dobashi
【甲府鳥もつ煮でみなさまの縁をとりもつ隊ホームページ】
http://www7b.biglobe.ne.jp/~torimotsu/
【甲府ん!路地横丁楽会フェイスブックページ】
https://www.facebook.com/kofunrojiykocho?fref=nf

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土橋克己/山梨県甲府市役所職員

1973年生まれ、甲府市出身。中央大学商学部(硬式野球部)卒業。甲府市役所に勤務する傍ら2008年、「甲府鳥もつ煮でみなさまの縁をとりもつ隊」結成。10年、ご当地グルメによるまちおこしの祭典「B-1グランプリin厚木」で最高賞のゴールドグランプリ獲得。11年、NPO法人こうふ元気エージェンシー設立。2014年、「甲府ん!路地横丁楽会」を立ち上げ、甲府市中心街の路地―横丁文化の魅力を発信する活動に取り組む。

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