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  • Drive Nippon vol.21

土橋克己の「地方見聞録」

人情、生活感、猥雑性―。魅力いっぱいの中心市街地「路地横丁」から、甲府を元気に!

 先月号で、甲府の地域資源である「路地横丁」をPRする「甲府ん!路地横丁楽会」活動を紹介させていただきましたが、何故に路地横丁なのか…その活動趣旨については次のとおり明確な理由があります。

 現在、日本の各地方都市では、モータリゼーションの進展などとともに、住民の生活行動や企業の活動が広域化しています。その過程における郊外での宅地開発や大型商業施設の開発などにより、多くの市街地で空洞化が深刻化しています。

 甲府市においても同様で、中心商店街歩行量調査によると、郊外の開発が本格化する直前の昭和61年、甲府中心商店街(以下中心市街地と記載)の歩行量は約38万人(11月第4週の金土日3日間)とピークを記録。多くの来訪客で賑わっていたことが分かります。しかし、郊外での宅地、大型商業施設の開発などにより、年を追うごとに歩行量は激減。平成27年調査では15万人と、ピーク時の4割ほどの水準まで落ちこんでいます。

 今後の人口減少社会、郊外大型商業施設の店舗拡充、リニア中央新幹線駅の甲府南部への新駅建設などにより、ますます郊外への人口移動や商圏の移動が見込まれるなど、中心市街地の一層の空洞化が懸念されている状況です。

 このように、甲府市中心市街地は、全国の他の地方都市と同様、負の側面が語られがちですが、かつての中心市街地周辺は江戸時代、城郭の修繕や市街地整備・拡張が行われ、文化や産業振興が大いに図られていました。江戸から学者や文化人、歌舞伎役者などが盛んに行き来し、亀屋座などの芝居小屋では歌舞伎が上演され、多くの料理屋も存在していました。

 特に江戸後期には、甲府の商家が町内ごとに曽我物語や京都名所などの画題を決め、歌川広重などの浮世絵師に幕絵の制作を依頼して、趣向と贅をこらして競い合うなど、多くの人々が集う華やかな文化があったのです。

 この様子は明治期も受け継がれ、あの太宰治が「甲府はハイカラである。シルクハットをさかさまにして、その帽子の底に小さな旗を立てたような、きれいに文化の、しみとおっているまちである。」(「新樹の言葉」より要約)と讃えた魅力あふれた街でした。

 太平洋戦争の空襲によって、中心市街地が焼け野原になった時期はありましたが、武田期、江戸期から、近年(わずか20数年前)に至るまでずっと、甲府の街は常に活気に溢れ、文化活動が盛んな街であり続けた。先人達は現代を生きる我々が誇りを持てる魅力ある街・甲府を展開していたのであります。

 山梨県民、甲府市民自身が忘れてしまった中心市街地の魅力。

 多くの人々が集い、魅力あふれる誇り高き街であった中心市街地の魅力再生には、特効薬などは存在しません。必要なのは、郷土を愛す心を持つ人たちによる取り組みの結集をもとに、地域の持つ魅力、地域の資源を再発見し、最大限に生かすことです。

 では、地域の持つ魅力、地域の資源を活かした中心市街地の再生には、何が必要でしょうか。

 それは、「過去の栄光をもう一度」と「活気に溢れた往年の姿を取り戻そう」などノスタルジーに浸りながら、郊外に展開する大型店と商圏を奪い合うものではありません。また、整然と整備されたメインストリートや洗練されたデザインの店舗が立ち並ぶ、暮らしやすく便利でありながらも、その土地の持つ特性や生活の匂いを微塵も感じることができない街を目指すものでもないのです。

 つまり、人を主役にした「生活の場としての再生」が必要。

 それぞれの地域に展開されている生活そのものこそが、地域の持つ本来の美しさなのであります。

 昭和30年代の東京下町の横丁を舞台に、そこに生きる人々を描いた映画「ALWAYS 三丁目の夕日」(2005年:東宝)に多くの人々が足を運んだことは記憶に新しいと思います。また、路地・横丁を特集した多くの出版物が刊行されており、懐かしい風景の再現を舞台装置としたテーマパーク型商店街も全国各地で展開され、多くの人で賑わっています。新宿の思い出横丁や吉祥寺ハーモニカ横丁などは、老若男女を問わず、周辺住民の憩いの場となり、さらに海外からの観光客からも注目されるスポットとなっています。

 どこか懐かしく、また、優しさがあふれながらも、猥雑性やいかがわしさも持ち合わす空間。いわゆる「そこの人たちの生活」を体験できる場所こそ、現在の人々が求めているものだといえるのです。

 甲府、中心市街地には、その要素を兼ね備えた空間が既に存在します。それが、数ある中心市街地の「路地横丁」なのです。

 横丁に連なる店は狭くて不便ではありますが、肩が触れ合う狭さのおかげで、気軽に話せる雰囲気による温かさがあり、隣に座った見ず知らずの人と気軽に会話が出来るのも、横丁店舗ならでは。お客さん同士、またお客さんと店主の間に、コミュニケーションが広がるなど、人情味あふれる雰囲気があります。

 「不便さが生み出すコミュニケーション」というものが存在するのが横丁店舗。不便だからこそ相手を思いやる心も生まれます。

 かつて甲府は、一人当たりの飲み屋率において「東の甲府、西の広島」といわれていました。しかし、甲府市民はすでに遠い過去として忘れてしまっています。

 中心市街地の「路地横丁」を通じて、地域の資源に目を向けてもらい、それを活用しながら活気を復活させることが、今後に続く甲府文化の再生、中心市街地再生の実現のための第一歩であり、また大きな鍵であると信じているのです・・・・
のイメージ写真

今後の土橋の見聞予定地及びイベント出展予定

9月11日  やまぼこ探検隊 甲府市中心街を探れ(甲府市)
9月24、25日 2016東海・北陸B-1グランプリin坂井(福井県坂井市)
11月19、20日 2016西日本B-1グランプリin佐伯(大分県佐伯市)
12月3、4日 B-1グランプリスペシャルin東京・臨海副都心
平成29年2月11、12日 2017東海・北陸vグランプリin富士(静岡県富士市)

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土橋克己/山梨県甲府市役所職員

1973年生まれ、甲府市出身。中央大学商学部(硬式野球部)卒業。甲府市役所に勤務する傍ら2008年、「甲府鳥もつ煮でみなさまの縁をとりもつ隊」結成。10年、ご当地グルメによるまちおこしの祭典「B-1グランプリin厚木」で最高賞のゴールドグランプリ獲得。11年、NPO法人こうふ元気エージェンシー設立。2014年、「甲府ん!路地横丁楽会」を立ち上げ、甲府市中心街の路地―横丁文化の魅力を発信する活動に取り組む。

【土橋克己フェイスブック】
https://www.facebook.com/katsumi.dobashi
【甲府鳥もつ煮でみなさまの縁をとりもつ隊ホームページ】
http://www7b.biglobe.ne.jp/~torimotsu/
【甲府ん!路地横丁楽会フェイスブックページ】
https://www.facebook.com/kofunrojiykocho?fref=nf

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土橋克己/山梨県甲府市役所職員

1973年生まれ、甲府市出身。中央大学商学部(硬式野球部)卒業。甲府市役所に勤務する傍ら2008年、「甲府鳥もつ煮でみなさまの縁をとりもつ隊」結成。10年、ご当地グルメによるまちおこしの祭典「B-1グランプリin厚木」で最高賞のゴールドグランプリ獲得。11年、NPO法人こうふ元気エージェンシー設立。2014年、「甲府ん!路地横丁楽会」を立ち上げ、甲府市中心街の路地―横丁文化の魅力を発信する活動に取り組む。

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